実質上新年2015年初投稿になります。新年初温泉に行ったものの帰りは10センチどころで済まないほど積雪しており、荒れる猛吹雪の中バイクで走行するという正月になりました。
常に雪が積もっているエリアというわけではなく、年に数回程度積もることがある京都での雪道走行について触れていきます(ということで、スノータイヤやチェーンを装備した場合ではなくノーマルタイヤで不意の積雪、といったシーンについて)。
狂気に見える二輪車での雪道走行
二輪車での雪道走行となると狂気に見えてしまいますが、意外と地面が凍らなければ大丈夫です。特に降りたての新雪はそこそこタイヤに食いつきます。一番危ないのは氷水に雪がかぶさっているようなぐちゃぐちゃの箇所の上で曲がる場合です。
なるべく停止をせずに発進時の空回りを防ぎ、あとはいかに車体を安定させるかとRを大きく描くかだけの問題になります。ただ、Rの描き方はなるべく大きい方がいいですが、一度止めてバイクを押して行くか、可能であれば停止寸前くらいでハンドルのみでゆっくり角度を変えていったほうがもちろん安全です。
こういう道を走る経験が、通常時にも活きてきます。といった旨のことを、高橋涼介が啓介に言っていました。
ということで、この件について少し書いていきましょう。
動画共有サイトなどでは、雪道をバイクで直進しているだけで「すごい」というコメントなどがありました。残念ですが、足を付いている時点でそんなにすごくありません。二輪用チェーンをつければ意外とカブでもしっかり走れます。
足を変に補助輪替わりにするより、雪でミューが下がっている状態でよりトラクションをかけるために、後輪に重さが伝わるように重心を少し後ろに移動したほうが安定します。一人より二人乗りの方が実は走るのは容易になります。
通常時は、車体は軽いほうがいいのかもしれませんが、このような場合は、後輪が路面に食いつかないと空回りしだして結局ふらつきます。車体を重くできるのならそうした方が安定します。
後輪が滑り出すと、前輪で角度を安定させようとしても、車体が倒れ気味になった時に一気にこけます。後ろが滑りだしたらスロットルは緩めたほうが無難です。
まだ車体の傾きに余裕があれば、カウンターを当てればクリアできます。どうせ低速ですから、くるんとスピンする前にカウンターで進行方向と車体の傾きを直したほうが楽です。
フロントタイヤが滑ったら終わり
スロットルを回すたびにテンパりそうになるのは、やはり後輪が滑る時ですが、リアタイヤが滑ってもフロントタイヤが機能していれば進む方向は変えられるので、そんなに怖くありません。雪道でグリップが一切効かず、フロントが滑るということは曲がらずにほぼ直進してしまうということです。
曲がろうとしていたということは、その先はたいてい壁やガードレール、最悪は対向車がその先に待っています。それが一番危ないです。
車が通ったあとの凸凹
慣れていないときは、なるべく溶けているところを走ろうとして、車が通ったあとの少し凹んでいるところを走ろうとしますが、ふとした傾斜で凹み箇所からずれてしまうとフロントがとっ散らかります。
そうなるとバランスを崩す可能性が高いので避けたほうがいいでしょう。また、半端に溶けていてより一層危なかったりします。
走行ポイント
では、道のどの箇所を走れば一番安定するのか、ということについて触れていきましょう。二輪車なので、なるべく左キワキワに走りたいところです。もちろんそうするべきです。
ただ、ここでひとつの注意点があります。雨を流すために左の本当のキワキワは軽く傾斜がついています。この傾斜こそが最大の敵です。それを避けるように、雪がまだ積もっている状態ならば、車道に引いてある左側の白線の少し中央寄りを走るのがベストでしょう。
車が通ってできたデコボコもなく、傾斜もないラインを探すのが最大のポイントです。新雪の上を歩いた時のように「足を取られる」感はあります。ですので確かに進み方は苦しいですが、足が取られているということはそれだけ食いついている証拠です。
その食付きが進む力をタイヤから雪の路面に伝え、曲がるときにも効いてくれます。そんな中、たまに橋の上などで凍っているようなところがあります。そのようなところでも、「車体を直角に、まっすぐ進む」分には進みます。
タイヤが回っている分には大丈夫ですが、ロックしたり、またハンドル操作を行うと、曲がらなかったり止まらない割に、車体の角度が傾いてしまい、こけてしまいます。
そういう箇所を「まっすぐ進んで」クリアした時に新雪の場所を探して、タイヤを食いつかせながらコントロールしていかねばなりません。曲がっている橋等では、なるべく橋に突入するまでに外側に寄せれるだけ寄せて、橋の上でなるべく「まっすぐ」に走れるよう、ライン取りをしなければなりません。コーナーに突入した時の車体の傾きは普段なら問題ありませんが、その傾きが雪道では命取りです。
雪の下の路面の状態
普段通っている道なら、雪が覆いかぶさっているその下に何があるか、ということを知っていたりします。靴で雪の上を歩いても、その下がアスファルトなら問題なく歩けても、少し傾いた鉄板の上に雪がかぶさっている場合は、同じように歩けばこけてしまいます。
雪対タイヤのだけ問題だけではなく、雪とその下にある路面の組み合わせを意識しなければ、ふとした時に滑ってしまいます。雪で隠れているその下の素材と傾斜を読みながら時にかなり手前から避けて走らねばなりません。
足を着いた先
実を言うと、両足をだらんと伸ばして補助輪がわりに併走させ、傾きを調整するのはいいですが、こけそうなときに踏ん張ってもその場所が鉄板の上なら足も滑ります。そうなると股が裂けるような状況になりますので、逆に危険です。捻挫や脱臼の元です。どうしても必要な場合は踏ん張るより弾くように蹴った方がいいかもしれません。
それよりもスリップが避けられない場合は車体を前面に捨てるようにしたほうが安全です。場所とスピードにもよりますが、雪の上に厚着で落ちてもそんなにダメージはありません。スキーでこけるようなものですから。車体ごと壁に突っ込んだり股が裂けるような状況の方が絶対に危険です。
ブレーキング
当然のことですが、減速のためにブレーキをかけるとフロントに荷重がかかります。教習所では7:3でフロントブレーキを強めにと教わりますが、滑りやすい路面ではリアブレーキがメインだということも同時に教わります。
リアブレーキ単体で滑っても後ろがフラフラするだけですが、雪道ではフラフラついでに車体が傾いたりします。もちろんリアブレーキ主軸でブレーキングするものの、全体の前後荷重を体感しながらフロントに荷重をある程度移さねば、曲がりにくくなります。
路面は一様ではないので、一律には論じえませんが、基本的にリアに重心を移したほうが雪道で進んでくれるので、リアに重心が寄った走行になっています。その時にリアブレーキ単体だとフロントが浮き気味になってしまいます。
そうなると横方向にグリップ力が効きにくくなるので当然曲がりにくくなります。車体を傾ける方が危ないので、ほとんどがハンドルのみの操作になります。
その際には曲がるかなり前からリアブレーキで減速しながらも、曲がる直前に一瞬だけフロントブレーキを補助的に使うことです。離した直後が一番曲がりますからね。
翌昼の残雪の中で
翌昼も雪道を走っていると、対向の車に爆笑されました。
しかしながら、経験した者しかわからない「意外と大丈夫」という点は、走らなければやはりわかりません。
通常は絶対に周りに止められますが、仕事や緊急時などで「走らざるを得ない」状況というものが、一度なりでも経験をさせてくれるので、たまにはそういうものに飛び込んでみてはいかがでしょうか。
大体は溶けてきていても橋の上、ビルの影などには雪や氷が残ります。京都は碁盤の目ですが、南北の道は全て溶けていても、東西の道の南側は雪が残ったりしています。
一番の不意打ちは大通りで南側に大きい建物がある交差点です。濡れているのかと思ったら実は薄い氷だった、という場合もたまにあります。
京都は電車が不便で、また道が細いため、自転車・バイクがたくさん走っています。爆笑してきたのはいずれも他府県ナンバーの地方人ですが、バイクで走っていたのは僕だけではありません。もっと速く走るおじさんもいました。
雪道の四輪走行なら、北海道や東北・北陸など、雪国の方が上手いだろうという予測がつきますが、二輪走行なら意外と「たまに降る」ような地域の方が一番上手いのかもしれません。
どういう理屈で
バイクでも車でも、ハンドルを切ったら曲がるんだ、アクセルを踏むから進むんだ、だけではなく、ハンドルを切ることによってどういう理屈で曲がっているのか、ということを考えなら走ると、どういうことが起きると滑るのか、曲がらないのか、ということがわかってきます。
最近ではタブレットやスマートフォンで「何事も簡単に」できるようになりました。それはそれで一つの進化ですが、代わりに中のソースを閉ざしてしまい、「どういう理屈でこうなっているんだろう」ということが見えにくくなりました。調べようとすれば、昔よりは情報がたくさんある時代にはなりましたが、まず疑問にも思わない、探究心が削がれるような時代になったのかもしれません。
いつも参考にさせていただいております。
自動車を物理する (外部サイト)
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